事例紹介(架空のロービジョンのある障害学生の場合)
特別支援学校(盲学校)在学中の女子生徒AさんがB大学への入学を決めた。AさんはB大学障害学生支援室の担当職員Cさんと面談し、現在の学校生活の状況や、今後の学生生活における希望などを伝え、B大学で可能と思われる内容についてCさんが書き取った内容は以下のとおりでした。
- 高校(特別支援学校)では拡大読書器、ルーペなどを利用(両視力障害)
- 点字も学習を進めているが、視覚が利用できることから実用レベルではない
- 屋外など明るいところが苦手であり、屋外では色眼鏡を装用している
- 慣れた校内は支障なく移動できるが、初めての場所では白杖を利用している
- 公共交通機関による通学可能。入学前より通学の予行演習中
- 入学時から大学近くのアパートで自立生活をする予定
- 可能であれば学内ロッカーを借りたい
- 入学当初は誰かに移動支援をお願いしたい(教室やトイレの位置を覚えるまで)
- 学生食堂では空いている席などがわからない。白杖があるため配膳も支援してほしい
- 入学当初より親元を離れてアパートでの生活となるため不安が大きい
事前の相談から決まったこと
B大学での授業などに関する配慮については以下のような内容から始めることにしました。
- 入学前、アパートから大学までの通学経路やキャンパス内移動を確認する
- 入学前におけるキャンパス内での移動には支援室Cさんが付き添う
- 図書館に拡大読書器を設置してあるがAさん専用ではないので予約をしてほしい
- 定期試験では拡大読書器を試験室(別室)に配置し、それを利用して受験
- 教室では本人が希望する座席(最前列)を指定席として確保する
- キャンパス内の施設入口には点字シールが貼付されているので確認してほしい
- 雨天時は傘と白杖を利用するため、荷物を置くためのロッカーを貸与する
- 自立生活(自炊)に向けて実家でも料理などを始めた
- 早急に大学周辺のスーパーマーケットなどの位置情報を提供する
- 授業時の配慮については、履修登録終了後に本人から教員へ「配慮願い」を提出
- 定期試験への対応は、別室受験(拡大読書器)、問題冊子・回答用紙の拡大とする
- 食堂での配膳や日常的な相談などについてはサポート学生による支援を実施するが、早く友人を作り、一緒に学生生活をする仲間に手助けしてもらえるような関係づくりを促す
入学前の話し合いから、Aさんは入学後の学生生活のイメージがわいてきた様子でした。しかし、地元から離れて一人暮らしとなることの不安は残っています。障害学生支援室の担当職員Cさんの話では、Aさんは緊張しているものの笑顔があり、自分の意見が言える人だから友人もたくさんできるのではないか、と感じたようです。サポート学生(先輩の女子学生)の人選についてはアパート暮らしの学生から探すようです。同じ障害ではないけれどB大学の先輩にも障害学生が在籍しており、早い段階で顔合わせをして障害学生同士の情報交換が進むように促していきたい、と今後の抱負を述べられていました。