事例紹介(架空の車いすを使う障害学生の場合)
特別支援学校在学中の男子生徒AくんがB大学への入学を決めた。AくんはB大学障害学生支援室の担当職員Cさんと面談し、現在の学校生活の状況や、今後の学生生活における希望などを伝え、B大学で可能と思われる内容についてCさんが書き取った内容は以下のとおりでした。
- 高校(特別支援学校)では自走式車いす利用(脳性まひによる四肢体幹機能障害)
- 大学進学を機会に電動車いすの導入を検討中(キャンパス内での移動距離が長いため)
- 特別支援学校では車いすに座った状態で授業を受けていた。高さ調整可能な机を利用
- 上肢に不随意運動があるため、書字の必要な資料や答案用紙などは拡大(A4→A3)
- 多機能トイレやドア開口部や内部が広いトイレは利用可(便座への移乗、更衣は可能)
- 車いすへの乗降(車いす〜椅子、車いす〜床)は自立
- 短距離であれば膝立ちにより移動可
- 公共交通機関による通学可能。入学前より通学の予行演習中(ガイドヘルパー有)
- 将来は、自立生活を目指し、大学近隣の障害者対応アパートの利用も検討
- 可能であれば学内ロッカーを借りたい(低い位置であれば利用可)
- 後ろから支えてくれる介助者がいればバスへの乗降も可能(短下肢装具を装着)
- 食事は自立している。箸、スプーンは利用可能。フォークは怖い。配膳は介助が必要
事前の相談から決まったこと
B大学での授業などに関する配慮については以下のような内容から始めることにしました。
- 電動車いすを導入した段階で、実際に通学経路やキャンパス内移動を確認する
- 教室への入退室の関係から最前列に車いす用机のみを配置し、そこを指定席とする
- キャンパス内多機能トイレの利用は可能であったため、基本的にはそこを利用する
- 雨天時は合羽を利用するため、校舎入口付近にフックをつけ、そこにかける
- 自立生活に向け、リハセンター(作業療法)で調理など家事訓練を進めるよう検討
- 学内ロッカーは車いす乗車時、もっとも楽に利用できる高さを用意することにした
- 授業時の配慮については、履修登録終了後に本人から教員へ「配慮願い」を提出
- 定期試験への対応は、時間延長(別室受験)、問題冊子・回答用紙の拡大とする
- 教室間移動に時間がかかるようであれば、遅刻とならないよう担当教員へ要請
- 次セメスターから、履修科目によって教室の場所を近くに変更する等の配慮を検討
- 食堂での配膳については、入学直後はサポート学生による支援を実施するが、早く友人を作り、一緒に食事をする仲間に手助けしてもらえるような関係づくりを促す
入学前の段階で、Aくんは入学後の学生生活のイメージがわいてきた様子でした。障害学生支援室の担当職員Cさんの話では、Aくんとの信頼関係形成も進みつつあり、サポート学生(先輩の男子学生)の人選についても検討をはじめたようです。同じ障害ではないけれどB大学の先輩にも障害学生が在籍しており、早い段階で顔合わせをして障害学生同士の情報交換が進むように促していきたい、と今後の抱負を述べられていました。