事例紹介(架空の補聴器を利用する障害学生の場合)
県立高等学校在学中の女子生徒AさんがB大学への入学を決めた。AさんはB大学障害学生支援室の担当職員Cさんと面談し、現在の学校生活の状況や、今後の学生生活における希望などを伝え、B大学で可能と思われる内容についてCさんが書き取った内容は以下のとおりでした。
- 高校(普通科)では補聴器(FMマイクを教員が使用)を装用して受講(中等度難聴)
- 聴覚がある程度利用できるため、手話はほとんどわからない
- 聴覚障害だと言うと手話を使われるが、自分には大きな声で明確に話してほしい
- ホールや体育館などが苦手で、ざわざわした場所だと声をかけられてもわかならい
- 声をかける際には、同時に身振りなどをお願いしている
- 高校には公共交通機関で通学している。大学ではアパートを借りる予定
- 手話が不得意だが、興味があるので手話サークルで勉強をはじめたい
- 聞こえに左右差があるため、左耳で聞きたいため、教室では右側前方に座りたい
- 先生にはFMマイク(授業ごとに自分が持参する)をつかってほしい
- 大きな教室や行事などでは要約筆記(パソコンテイク)があれば利用したい
- 特別支援学校(聾学校)ではないため支援に対する情報が少ないことが心配で不安
事前の相談から決まったこと
B大学での授業などに関する配慮については以下のような内容から始めることにしました。
- 高校で利用しているFMマイクを持参してもらい、大教室などで試用する予定
- 特に、大教室での音響システムとうまく共存するかチェックする必要がある
- 他の聴覚障害学生が利用している要約筆記(パソコンテイク)の利用も検討
- 音声認識システムによる授業支援についても利用してみたいとの要望あり
- 語学学習システムにおける補聴器の利用については語学教員との調整が必要
- ビデオ教材を利用する際には原則「字幕付」とし、無い場合は文字起こし文書を渡す
- 教室では本人が希望する座席(前列右側)を指定席として確保する
- 授業時の配慮については、履修登録終了後に本人から教員へ「配慮願い」を提出
- 定期試験への対応は、試験の開始・終了などを監督者が板書することで対応
- 他の聴覚障害学生は手話でのコミュニケーションを主としているが、本人の意識が高いため手話サークルなどを通して他の聴覚障害学生との接点を作り、ともに学生生活をする関係づくりを促す