情報バリアフリーラボでは、円滑なコミュニケーションをはかるために必要なシステム(情報通信機器のみならず、簡単な道具やわずかな工夫を含みます)についての情報提供をしてゆきます。
障害者基本法には情報の利用におけるバリアフリー化が定められ、情報を利用し、また意思表示ができるようにするため、障害者が利用しやすい電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の普及、電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進が図られるよう必要な施策を講じなければならないとされ、さらに情報の取得や他人との意思疎通もその目的に加えられています。
近年の情報通信機器の大きな進歩とともに研究開発されてきた各種機器についても「温故知新」として紹介してゆきます。歴史的にはそれほど昔ではないものの情報通信機器の進歩とともに障害者の利用するインタフェースについても変化してきました。スマホやタブレット全盛となり逆に操作方法があまり検討されず、適切な操作環境が提供されているとは考えにくい状況になっているとも言えます。もちろん、最新技術による支援機器についても紹介してゆきますが、これらについては多くの情報があり、それらのリンク集のような形態になるかもしれません。
温故知新(その1)
パソコン通信時代(インターネット以前)、NiftyServeのフォーラム(電子掲示板)はいくつものジャンルがあり、そのひとつに「障害者フォーラム(FHAND)」がありました。そこに情報提供を始めたのがきっかけとなり、肢体不自由者のためのマウスやキーボードの情報を集めてきました。インターネットの普及により、NiftyServeのフォーラムが廃止され、その後はwebで情報発信をしてきました。しかしながら、各種インタフェース装置そのものの開発が少なくなり、またそれらの入手ができなくなったこともあり2005年を最後に更新が止まりました。
ここにリストされているインタフェース装置はほとんどが製造中止となっています。しかしながら、その多様性や柔軟性には目を見張るものもあります。そのため、保有するインタフェースのうち、なんとか動くものについては可能な限り情報を残してゆきたいと思い、今後、わずかではありますがデータをアップしてゆきたいと考えています。
まずは、過去の障害者用インタフェース装置がつながるマシンを確保していくことから始めています。
- IBM ThinkPad 600E +Windows95
- Apple Macintosh SE30 +OS7.1
- 障害者の利用を考慮したユニバーサル・インタフェース
- 日本リハビリテーション工学協会/ライフサポート学会合同シンポジウム2000(講演要旨)
パソコンやインターネットの普及が急速に進んだ1990年代。パソコンの機種によってマウスやキーボードのコネクションが異なり、機種によって用意しなければなりませんでした。障害のある人たちが利用する特殊な入力装置などの場合、それぞれの機種ごとに対応をする必要がありました。そのため、インタフェースの共通化(ユニバーサル化)が検討され、基本ソフト(OS)に依存しないハードウェアによる共通化として提案されたのがTAS(Total Access System)です。
現在、パソコンの多くがUSBという共通化されたコネクションを採用しているため、1990年代のようなユニバーサル・インタフェースの必要性は少ないように思われます。ただし、障害のある人たちが利用する特殊な入力装置なども当時よりも少なくなりました。
- 1990年代に入手可能であった各種インタフェース装置(具体的製品の概要)
上述の「身体障害者(肢体不自由)が利用可能なパソコン入力装置」リストにも含まれているインタフェース装置のうち、所有する機材について現時点で再評価しています。特に、接続するパソコンが入手できない現状では装置そのものの利用はほぼ不可能でありますが、その装置が有する機能や具体的な利用者像を再評価することは、今後開発されるであろうインタフェース機器の参考になると思われます。- 文字入力やメッセージや機能を選択するための装置(キーボード代替装置)
- Ke:nx
- Ke:nx Onboard
- IntelliKeys
- IntelliKeys USB
- トーキングエイドα
- レッツチャットキッズ
- 画面上のメニューやアイコンなどを選択するための装置(マウス代替装置)
- Turbo Mouse
- Head Master Plus
- Head Tracker
- 文字入力やメッセージや機能を選択するための装置(キーボード代替装置)
古いPC/Macなどのための情報リンク集
温故知新(その2)
過去の多様な経験や情報をもとに、新しい取り組みに生かす試みも展開していきます。特にスマホやタブレット一色になっている現在の情報環境は、使いやすいとは思えません。利用者の身体機能は多様であるため、多様な手段による操作方法の提供が必要なのです。
- タブレットPC(iPad)をタッチではない方法で操作する
Apple社のタブレットであるiPadのOS(基本ソフト)にはApple社の伝統的な取り組みでもあるアクセシビリティ機能が盛り込まれています。例えば、伝統的なパソコン入力装置であるUSBキーボードやUSBマウスをアダプタを介して接続することにより文字入力や画面上のポインティングが可能になります。もちろん、タッチの仕方をユーザーに応じて変更することも可能です。- iPadのアクセシビリティ機能を使ってみる(Apple社のWEBページ)
この機能を利用すると、例えばジョイスティック型マウスをiPadに接続することができ、画面へのタッチができずに操作を諦めていたようなユーザーであってもiPad利用の可能性が高くなります。 - iPadをジョイスティックで操作する
- iPadのアクセシビリティ機能を使ってみる(Apple社のWEBページ)
ゲーム用パドルの応用
最近、ドローンやゲーム用のアナログスティックが部品としても流通しています。このスティックをMicro:bitというボードコンピュータに接続し、ボードコンピュータ用HIDプログラムを用意できればBluetooth(無線通信)のマウスに変身します。
Micro:bit(英国BBC)
USBジョイスティックの試作
上記Micro:bitは無線で接続する形態のマウス代替装置。無線である必要がない場合は有線接続が一般的。
Micro:bitよりも安価なArduinoというボードコンピュータを利用したジョイスティック型マウス代替装置を試作中。
USB_Joystick(取扱説明書)
USB プログラマブルキー
Amazonで購入できるUSBプログラマブルキーを入手し評価を始めました。
入手したのは4点キー。設定等はWEBからダウンロードする仕様ですがページのほとんどが中国語で表記。インストールはハードルが高い印象ですが、アプリでの設定は順調に。Windows10の仮想デスクトップを変更するためのショートカットキーを設定し評価中。
ADB to USBコンバーター
Old Macintosh用に開発された各種入力インタフェース装置を現在利用できるUSBインタフェースを有するパソコン(iMacやiPad、Windows10マシン)で利用するための中継用コンバーター。
既製品iMate(写真下)はすでに製造中止であるため、自作するための記事をこちらに書きました。
RFIDを利用したVOCA試作
以前、RFIDを組み込んだ絵カードを教育現場で活用するプロジェクトがあった。開発したメーカーが廃業となり、各種パーツが入手しやすくなったこともあり、試作を検討してみた。ほぼ当時の機能を有するコミュニケーションエイドができ、今後の活用について検討を開始した。
【特許4928820】