カリフォルニア便り 第2号
スタンフォード大学 CSLI, Visiting Scholar 伊藤英一
アメリカ生活の開始
- 前号でも述べましたが、スタンフォード大学・CSLIは大学からは独立した形の研究機関であり、財政的には様々な企業からの提携で運営されている面が随所に見受けられます。そのため、私のようなVisiting Scholarとして滞在する研究員の多くは民間企業からの派遣で、しかも研究内容が「言語・情報」というキーワードであるため、日本の電子通信関連企業が目立ちます。常時数人の日本人がいるようで、私もこちらに来た当初は研究業務はともかく、生活を立ち上げるための様々な情報が日本語で得られたのは助かりました。
- 生活をするためにまず必要なのが住む処、つまりアパート探しです。スタンフォード大学にも寮はありますが学生が対象で、Visiting Scholarの場合には一般のアパートに住むことになります。斡旋というほどのものではありませんが、大学近郊のアパートや長屋、一戸建て等の物件を、大学関係者を対象に情報を提供するWebサービス[http://www-leland.stanford.edu/dept/hds/](住宅情報はパスワードが必要になります)があります。私は日本からこのWebにアクセスし、場所や価格、更新サイクル等を見て、ある程度のアテを得ることが出来きました。また、住所(番地)さえ解れば電子地図[http://www.infoseek.com/]等で地図上で確かめられます。
- 私の場合、渡航直前に見つけた物件のオーナーにFAXを送り、物件を見たい旨を告げておきました。まずは単身で渡航後1週間ホテルに滞在し、それらの物件を含めて不動産業者とアパートを見てまわりました。妻と息子2人計4人家族で生活するための条件として、広さは2ベッドルーム、小学校に近く、環境の良い所、買い物にも便利で、できればスタンフォード大学に自転車などで通える所という事で探し始めましたが、スタンフォード大学に近いという条件は価格的にかなり高額になるということからあきらめました。最終的には、Webサービスで見つけた家具付き(アパートの大半は家具無し)のタウンハウス(日本的には長屋といいます)に決めました。スタンフォードまで車で20分。小学校(K−4:キンダーガーテンから4年生)は徒歩20分ですが通常は車で送迎です。中学校(5−8:5年生から8年生)は徒歩3分、スーパーマーケットも歩いて行ける範囲(買い物の量が日本とは比較にならないほど多いので車で行きますが...)で、子供用?の共同プールが付いています。
- アパートはこの辺り(地図)
- アメリカでは車が生活必需品です。1年間という短期滞在の場合、リースはほとんど不可能で、また一般のレンタカーはかなり割高(日本よりは安い)となります。大抵の方は帰国時に苦労して売る覚悟で購入されるようですが、自分は自動車ディーラーが独自に行っている長期レンタルを利用しています。これも渡航前に電子メールにて仮予約をしておき、住所などが決まった時点で契約をしました。但し、自動車保険は別契約となりレンタル料以外に必要です。保険料は運転者の年齢やアメリカでの運転経験や事故暦、婚姻の有無、住所(居住地の治安なども割引率を左右する)によって決められますので、若い独身男性の場合にはかなり高額になります。
- アパートによっては電気、水道、ケーブルテレビ等の料金などが家賃に含まれている場合もありますが、我が家の場合には水道料金(水と湯)だけでした。電気(ガスは使っていません。キッチンも全て電気です)は地域に複数ある電力会社と個別に契約する必要がありました。しかも契約には世帯主(自分)の社会保障番号(Social security Number)が必要なのですが、当時自分は渡航直後でそれがありませんでした。アメリカにおける自分の担保(保障)が無いという事で、電力供給会社PG&E[http://www.pge.com/]の窓口に出向き、身分を保証するパスポート等を提示することを要求されました。こちらではすでに電力も自由化され、電力供給会社も競争を強いられるようになり様々なサービスを用意しているようですが、自分は老舗のPG&Eを選択しました。
- 電話もライフラインと呼ばれるほどの生活必需品です。電話の開設も電力会社などと同じく電話で開設依頼をします。電話の開設にはオプションがかなり多く、その内容説明を聞くだけでも大変解り辛いといわれています。そのため、ここカリフォルニアの地域電話会社PacificBell[http://www.pacbell.com/]には日本語サービスがあるのですが、運が悪く渡航直後に竜巻があって電話回線の状態が悪くつながりませんでした。助けを借りて一般の開設窓口で何とか契約したものの、やはり社会保障番号が無いということで、会社の窓口に出頭してパスポートを提示することを要求されました。費用は定額制と従量制があり、定額制の場合には市内通話の場合は何回でも何時間でも同一料金ですからインターネットの利用も苦になりません。また、長距離電話会社は別で、電話の開設指示の時点で申し込む必要があります。インターネットのプロバイダもしているところもあり、国際電話の割引料金等サービスの内容や目的によって選択することが可能です。我が家では、やはり老舗のAT&T[http://www.att.com/]を利用しています。
- アパートの家賃、電気料金、電話料金、自動車のレンタル料金などの支払いは全て銀行小切手(Personal Check)で支払わなければなりません。そのためには銀行に当座預金口座を開設する必要があり、通常この開設にも社会保障番号が必要となります。しかし、いくつかの日系銀行では日本から来た滞在者への配慮としてパスポートとクレジットカードなど身分(信用)を保証するものを用意すれば開設できる銀行もあります。私の場合、自宅とスタンフォード大学の間にあるUnion Bank of Carifornia[http://www.uboc.com/]を利用しています。また、日本のCiti Bankに口座があれば、電話取り引きを利用して海外送金の指示が出来るので大変便利ですが、大変な円安なので¥から$への換金時期をいつにするか苦労します。
- 社会保障番号の申請は各地にある社会保障事務所(Social Security Administration Office)[http://www.ssa.gov/]にパスポートとビザなどを持参して申請します。住所や電話番号などを記載する必要があり、最初にこれを取得するのは無理なのですが、しかし上記の通りこれが無いと大変な手間と時間と交渉が必要です。また、社会保障番号の取得もかなり厳しく、私は自分自身の申請で3回、妻の申請で2回の計5回も事務所に足を運ぶはめになりました。窓口の担当者の判断にもよりますが、交渉と辛抱強く通う事が必要なのでしょうね。
- 渡航後当面の間は国際運転免許証で自動車に乗れます。しかし、カリフォルニア州では居住者はカリフォルニアの運転免許が必要であることと、社会保障番号よりも一般的な身分証明となるため、運転時に携行する以外、銀行小切手を振り出す時や酒類の購入などでも必要となります。運転免許は最寄りのDepartment of Motor Vehicles: DMV[http://www.dmv.ca.gov/]に出向き、受験手数料を支払い、視力検査の後、筆記試験問題(3者択一)を受け取り、事務所脇のカウンタで答案を作ります。時間制限はありません。その場で採点され合格すれば、免許取得者が同乗すれば路上で運転の練習が出来る借免許が貰えます。また、路上の運転試験は自分の車を持ち込み、検査官が助手席に乗り込み、進路を指示しながら運転内容を検査します。20分程度の試験を終え、合格すれば「親指の指紋」と「顔写真」を電子的に撮影され、後日免許証が郵送されます。(これを執筆時点で、まだ郵送されて来ませんので、どのような物かは定かではありません)
- 以上のように、生活を立ち上げることにおいても、インターネットからの情報や、自宅や職場に居ながら様々な情報が得られるような環境が、こちらではすでに出来つつあります。大半の日本人はインターネットとは情報を検索したり収集するものと考えがちですが、利用できる情報が有るということは、有用な情報を企業や学校、公的機関、個人が責任を持って掲示し、逐一更新しいているということに目を向けなければなりません。
(自宅でのパソコン環境)
次回(第3回)予告:アメリカの教育について(変更の可能性もあります)
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July 24th, 1998
伊藤英一 Eiichi ITO [ ito@csli.stanford.edu ] Visiting Scholar, The Archimedes Project CSLI Stanford University