(1)大学に進学したいと考えた理由や将来の目標など(当時)
私は保育園を除き、小学校から高等学校までの期間、盲学校(特別支援学校)で学校生活を送ってきました。その中で、
- 盲学校は児童・生徒数が少ないので、多くの人たちと日々学んでみたい。
- 社会に出る前に、視覚障がい当事者や、理解のある人たちに囲まれた世界ではない中において、自分はどのように過ごしていけばいいのかを考えたい。
- 視覚障がい(特に全盲)の進路(就職)としては、あん摩マッサージ指圧、鍼、灸の三療が代表的なものとして挙げられています。周囲からも進められましたが、決められるのではなく、自分の進路は自分で決めたい。
との思いとともに、当時環境問題に興味があったことから、それらを学ぶことのできる環境系の学部のある大学へ進学を決めました。
(2)大学に進学することを決めた時の不安や課題など(当時)
大学では教科書よりも授業当日に配布されるプリントを使うことが多いと聞いており、また板書が中心の授業にもなるため、そもそも全盲の学生が晴眼者が多い大学でちゃんと学生生活を送ることができるのか、また広い校舎(キャンパス)で迷子にならないか等々、たくさんの不安がありました。
(3)入学後、気づいたこと(良かったこと、悪かったこと)
よかったこと:自分から行動すること
相手からは自分の障がいのこともあり、きっと話しかけずらいかなと思うので、自分から話しかけたり積極的に人の輪に入っていくよう心がけました。
講義の出席を登録するために提出する出席カードを周りの席の学生に頼んで書いてもらったりする(先生からは知っているから書かなくていいよ、と言っていただいていましたが)うちに周囲の学生と話しをするようになったり、ゼミナールやサークル活動で仲良くなったり、友達の友達とも知り合ったりすることができました。
大学の先生方や職員の皆さんから多くのご支援をいただきつつ、友人たちのおかげで大変有意義な学生生活を送ることができ、感謝するとともに自分から行動することの重要性を感じることができました。※もちろんやってもらうばかりにならないように気を付けていましたが。
悪かったこと:自分ですべてやろうとしてしまうこと
時間がかかってもどのように工夫すれば、見えないながらも自分一人でやれるかということが大切だということを盲学校などで教えてもらったことでしょう。
私自身、自分のことは時間がかかっても自力でやらねばと思っていました。大学のゼミナールやサークル活動等を通して、自分でやろうとするばかりでは集団での活動においては周りの進捗を遅らせてしまうことに気づくことができました。
そのことはなかなか周りからは指摘しずらいと思います。当時の友人たちには迷惑をかけた部分が多かったと思います。
私の所属学科は社会学系であったため、統計学やデータ解析に関する専門科目や、プログラミングの基礎に関する科目も多くありました。これらの授業科目に対応していくため、また友人らと同じPC環境であれば困った時に対処がしやすくなると考え、スクリーンリーダーをそれまで使っていたPC-TalkerからJaws4.5へ変更し、文書作成や表計算、プレゼンテーション資料などの作成をそれまで使っていた高知システム開発の製品からMicrosoft Office製品に変えました。
大学入学後から慣れるように使っていましたが、いざ専門科目の講義が始まるとJawsでも読み上げないデータがあったりキーボードでは操作できないものもあったり、さらにはJawsとその関連ツールでの作業において自分のPCのスペックが足りず強制リブートしたりと、とても苦戦したことがありました。
その度に打開策を詳しい人に聞いたり、先生方に画面を見て頂ながら、どこまでは対応可能でどこからが難しいのかを説明し、相談しながら学修を進めてきました。このことからも、全てを自分ひとりで対応できるわけではないこと(誰しも当たり前ではありますが、改めて)そのような場面においてどのように対応したらよいのかを考え、学ぶことができました。
社会人になり、仕事の対価として給料が発生します。仕事に時間が掛かれば(仕事の早い人と比較すると)企業としては経済的な負担が増えることになります。企業というチームとして考えるならばチームメイトの迷惑にならぬよう、また仕事が円滑に回るように行動することを見極め、自分にできることを精一杯やることを心がけています。
もちろんチャレンジしないと仕事は広がりませんが、チームとして考えたとき、社会人14年目の私であってもどこまで自分でやってみるか、見極めと折り合いには悩むばかりです。
(4)大学生としての活動で記憶に残っている活動や出来事など
軽音楽のサークル活動や、製造業での2週間のインターンシップ、中国での大学の短期研修等、たくさんありますが、友人たちと学内の障がい者同士・健常者も含めた交流を目的としたサークルを立ち上げたことが、今につながっていると思います。学内でのイベント企画や実施はもちろんのこと、地域の子どもたちとレクリエーションを通して障がいについて感じてもらったり、地域や企業の皆様に対して障がい・人権についてお話をしたりしました。
そこには、多くの出会いがあり、今でもたまに講演のご依頼をいただくことがありますが、これらの経験を通して、障がいもプラスに活かして行けるんだと思えた一つのきっかけになっています。
(5)自分と同じ障害のある後輩たちに向けて
大学への進学に対しては不安も多いかと思います(もちろん私もそうでした)。まずは、やってみる、挑戦してみる、というのが大切だと思います。やろうとすると手を差し伸べてくれる人もたくさんいます。もちろん、失敗することもあるでしょう。しかし、その時は失敗したと思うことであっても、将来その経験が役に立つことってたくさんあります。
4年間の学生生活を通して、これからの自分がどうしていきたいかを考える、という内容でもいいと思います。その時にできた仲間って、社会人になってもつながりは続いていきます。
たくさんの仲間と楽しい学生生活を過ごしてくださいね!