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掛川倖太郎さんの場合

(1)大学に進学したいと考えた理由や将来の目標など(当時)

 内臓疾患による内部障害がある私は、誕生より入退院を繰り返していたものの普通に学校へ通学していました。そのため普通の高校生と同じく、同級生の多くが進学するという理由から自分もそうするのだ、という感じで特に動機はありませんでした。理系科目が絶望的だったこともありなんとなく「文系」で、就職に有利に思え、クラス担任の勧めなどから福祉系学部を志望しました。

 第一希望は地元を離れ、県外の大学を考えていました。高校3年の時は体調がすぐれず、受験勉強が満足にできませんでした。しばらくは、机にしがみつきながら放課後の受験対策講座を受けていましたが、入退院を繰り返していたこともあり、大学入試センター試験を断念し、地元の福祉系学部のある大学のAO(現・総合型選抜)を受験することにしました。
 合格はしたものの第一希望ではなく、また高校の文化祭や部活動発表などの行事には体調不良が重なり満足に参加することができなかったことなどもあり、進学、あるいは学校というものに対してポジティブな気持ちはありませんでした。

(2)大学に進学することを決めた時の不安や課題など(当時)

 体調不良が続いていたこともあり入学しても、学業を継続できるかが一番の心配事でした。日常生活での物理的な支援の必要性はありませんが、高校でも度重なる体調不良や入退院により卒業単位が危うくなり留年するところでした。
 それまでの経験から、1年に一度は入院、あるいは体調の良くない時期があり、大学入学後も同様に起こりうると考えてしまい、そうなった時にはどうしようかと不安でした。

(3)入学後、気づいたこと(良かったこと、悪かったこと)

 幸いなことに大学入学後から3年生前期までは大きく体調を崩すことはなく、楽しいキャンパスライフを送ることができました。情報保障のためのサークルでボランティア活動をしたり、文芸活動をしたり。学修においてもそれほど困難なことに遭遇することはありませんでした。
 3年生後期に体調を大きく崩し、半年ほど入院しました。留年・休学が決まったとき、悔しくて病室で泣いていました。仕方のないこととはいえ、やり遂げたいことが全力でできなかったという悔しさがいっぱいでした。
 復学の時期を9月にするか4月にするかで悩みました。早く復学するためには9月なのですが、卒業論文の発表会や式典としての卒業式への参加、さらには社会福祉士国家試験の受験対策講座も中途半端になってしまうなどの理由から、新年度の4月に復学することにしました。復学後は体調を崩すことなく、国家試験の勉強も、サークル活動も、卒業論文も、公務員試験もこなすことができました。

 振り返ってみると、大学では多くの教職員に恵まれたと思います。物理的な面での支援はあまりいらなかったのですが、内部障害に対するさまざまな配慮があり、相談を通して休学・復学のための各種体制が整っていました。病気だからといって邪険にしたりするどころか、自分が様々なことに挑戦できるよう環境を整備してくださいました。
 おかげで目標であった公務員試験や国家試験、卒業論文をすべて叶えることができました。

(4)大学生としての活動で記憶に残っている活動や出来事など

 大学では3つのサークルに入っていました。文芸部、学生赤十字奉仕団(SRC)、ノートテイクサークルです。文芸部では副部長を、ほかの二つは部長をつとめました。

 ノートテイクサークルでの活動が課外活動の大半を占めていました。障害学生支援として、大学では聞こえに障害のある学生を対象に、教員の音声をパソコンや手書きで文字にして伝える、情報保障を推進しています。学生の課外活動としてのノートテイクサークルは障害学生支援室と連携しながら、学生ノートテイカー(情報保障を担当する支援学生)を集める広報、勉強会による資質向上、学外での情報保障活動などを実施しています。
 私が活動していた当時、サークルにはいくつかの課題がありました。学生ノートテイカーの不足、ノートテイクに関する学習の機会が少なく実務経験による活動しかできていなかったこと、学内のみの活動が多かったためモチベーションが保てない、などです。それぞれについて外部の支援団体等と連携しながら、これらの課題解決に取り組んでいました。
 私がサークルに入部したときは4年が4名という同好会でしたが、卒業時には学生自治会公認サークルとなり、メンバーも40名を超え、県外のシンポジウムに参加したり、地域のイベントなどでも積極的に活動をするようになりました。発足から10年以上が経った今でも存続し、活動をしていると聞いています。

サークルで活動中の掛川さん
ノートテイクサークルにて

(5)自分と同じ障害のある後輩たちに向けて

 病気や障がいがあると、自分ひとりではどうにもならないことがどうしても出てきます。思い通りにいかず悔しい経験もあると思います。もしかしたら、入学当初の動機や目標を泣く泣く修正しなければいけないことも出てくるかもしれません。不安な時や迷った時はゼミナールの教員や身近な職員に相談してみてください。
 相談する相手が自分には合わないと思うのであれば、他の教職員や周囲の信頼できる人たちでもいいと思います。そして、心身ともにしんどいときは休学なども選択肢に入れてほしいと思います。休むことは悪いことではありません。

 また、学内のみならず学外の団体や人たちとも積極的につながってみてください。様々な生き方に触れることができると思います。ぜひ大学生活を楽しんでください。