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伊藤華奈子さんの場合

(1)大学に進学したいと考えた理由や将来の目標など(当時)

 私は、特別支援学校高等部2年生の時にDO-ITプログラムに参加しました。当時のプログラムの趣旨は、障害のある生徒が社会の現状や変動に受け身になるのではなく、自ら主体性を持って社会変革に携わっていくための方法を講義やワークショップ等から学ぶというものでした。それに参加したことがきっかけになり、障害当事者の目線で社会へ提言・改善に関与していくことの大切さを知ることができました。
 さらに福祉を学ぶことでよりその役割が明確化され、自分の将来につながるのではないかと考え、社会福祉系大学への進学を志望しました。当時の目標は社会福祉士を取得し、障害者施設等で相談員をすることでした。

(2)大学に進学することを決めた時の不安や課題など(当時)

 どの大学に進学するかについては随分と悩みました。私の場合、車いすを利用しており、まずは一人で通学やキャンパス内移動ができないかを検討しました。いくつかの大学のオープンキャンパスや大学見学会などに足を運び、キャンパス内やその周辺を実際に自力で移動してみたり、障害のある学生でも利用可能なアパートの情報を大学窓口で相談してみたりしました。正直、難しいなと思う大学もありました。
 それらの経験から、入学前の段階における自己対策として取り組んだのがリハビリテーションの強化と実用的な移動のための電動車いすの導入でした。
 進学したい大学がなかなか決まらない中で受験対策をするのは不安でした。いくつかの候補にあがった大学の受験科目を勉強したり、新聞の関心記事に目を通したりしていました。最終的に受験大学を決めたのが高校3年生の夏で、それから3か月後に入学試験がありました。

(3)入学後、気づいたこと(良かったこと、悪かったこと)

 大学2年次に履修した実習では、10名弱のグループにより福祉施設等で実習に行きました。車いすを利用している私は利用者の方々とお話をする中、他の学生たちは利用者とお話をしながら簡単な介護なども体験していました。

2年次の実習にて(共同作業所)
2年生の時に参加した実習にて(作業所)

 利用者との言語コミュニケーションはとても重要だけれども、実際に介護を体験することで、利用者個人の真のニーズが把握でき、それを生かした支援につなげていくことができる、ということに気づきました。現場経験こそ相談業務の基礎だということを実感しました。それまでは当事者意識など自分の内側にばかり目を向けており、それに気づいた直後はショックを受けました。しかし、意識を切り替え、じゃあ自分にできることは何だろうかと再自問しました。いまでは大切な視点に気づけた貴重な経験だと思っています。

(4)大学生としての活動で記憶に残っている活動や出来事など

 1・2年の頃は周りに声を掛けられるままボランティアやサークル活動など、広く浅く手を出していました。しかし3年次になって自分のペースが分かってくると、そういった課外活動は2つほどにセーブし、変更可能な融通の利くものだけを選択し無理をせずに取り組めるようにしました。
 記憶に残る学生生活といえば、全く個人的な趣味で恐縮ですが、一人カラオケに夢中になっていました。授業が終わり、大学近くの駅から市中まで電車に乗り一人で出かけました。一人暮らしをしていたこともあり、自由にできましたし、公共交通機関の利用にも慣れました。
 大学生となり一人暮らしを始めることで、誰にも気兼ねなく、行きたい時に行きたいところへ行く、という楽しさを知ることができました。その後の就職活動や現在の社会人生活にも役立っています。

(5)自分と同じ障害のある後輩たちに向けて

 大学での学修や学生生活など様々な面で不安を抱えていらっしゃるのではないかと思います。もしかしたら私のように、在学中に進路の迷いや勉強する意味を問いただすかもしれません。それでも、今、お持ちの考えに従って一歩前に進んでみることが大切だと思います。
 大学で学んだことが全てではなく、卒業後に随時学び直すこともできますし、悩みに直面したときは、その時々の自分自身が知恵と経験で何とかしてくれます。自分のペースでオーバーワークにならずに学んでいっていただければと思います。