Skip to content

情報バリアフリーラボのご紹介

情報バリアフリーラボ設立の経緯

 情報バリアフリーラボ代表の伊藤英一は、神奈川県総合リハビリテーションセンターなどのリハビリテーションエンジニアとして17年間勤務をした後、長野大学へ移り社会福祉学部教授として18年間勤務いたしました。大学では「情報バリアフリー論」「福祉コミュニケーション論」「福祉用具の知識」「リハビリテーション論」などの専門科目や初年次教育、専門導入科目、社会福祉士の実習指導などを担当しておりました。
 リハビリテーションセンターと福祉系大学での勤務を経験することで得られた知見(ノウハウ)などをさらに生かすことができないだろうかと考え、大学教員としての定年前ではありましたが還暦となるのを契機として退職いたしました。

 リハビリテーションセンターを退職する時、利用者さんのご家族(母親)から「伊藤さんは私たちを見捨てて、象牙の塔にこもるのですか?」と厳しいご意見を頂戴し、自分の分身を生み出すことが自分の使命だと応えました。研究をするための大学教授ではなく、教育をするための大学教授になるべく努力をしてきました。果たして自分の分身が何人生まれたのかは定かではありませんが、ゼミナールや実習指導を通してわずかでも意識とか想いが伝わり、良い支援者になるためのお手伝いはできたのではないかと感じてはおります。
 大学では学内の業務も担いました。広報や入試、学生支援などです。大学の特色を広く社会へ広報するためには学生の活き活きとした活躍や行動を伝え、興味をもたれた生徒にはオープンキャンパスで学生と関わり、こんな学生(先輩)になりたいと思わせることが大切です。そして、入学してきたらそれぞれが思い描いた学生生活を送れるように後方支援を万全にします。。

 大学での勤務を始めた頃、身体障害のある学生が普通に学んでいました。聴覚障害のある学生には授業中の教員の音声を文字化するためのノートテイク支援や、視覚障害のある学生には配布資料の拡大や点字化・電子化などによる情報保障を提供し、校舎にはエレベータを設置し、多機能トイレなど肢体不自由のための設備改修も行ってきました。
 また、日本アイビーエム社と共同で音声認識システムを利用した授業支援プロジェクトを推進したり、沖ワークウェル社の在宅障害者との協働に関する共同研究にも関わってきました。

 これらの経験を研究という狭い枠組みに囚われることなく広く社会に普及すること、あるいはこの地域社会への貢献活動への転換が必要だと感じ、ラボ設立となりました。

情報バリアフリーラボが目指すこと

 障害者差別解消法には「社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行う」ため、環境の整備・事前的改善措置等に努めなければならないことが定められています。さらに、障害者差別解消法に基づく基本方針においては、「障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等」を「事前的改善措置」の一つとして挙げています。

 また、障害者基本法には「情報の利用におけるバリアフリー化」が定められ、「情報を利用」し、また「意思表示」ができるようにするため、障害者が利用しやすい電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の普及、電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進が図られるよう「必要な施策を講じなければならない」とされ、さらに「情報の取得」「他人との意思疎通」もその目的に加えられています。

 代表の伊藤は、リハビリテーションセンターで重度障害者の情報保障やコミュニケーション支援に関わってきた経験から、障害学生支援のための情報保障や情報バリアフリーの教育研究活動にも従事し、地域社会における各種課題の解決手段として工学技術の利活用の推進に注力して参りました。このたび、障害の有無に関わらず等しく生活するための環境をいかに整備すれば良いのか、あるいは障害者や高齢者が情報通信ネットワークICTを利活用するためにはどのような補助機器が適しているのか等、に関する事業を展開してゆきたいと考え、その活動拠点としての工房開設を目指しています。

情報バリアフリーラボの目標

 ICTを利用することで世界各地の美術館を瞬時に巡ることも、書店に行かず図書を購入することも、遠隔地の友人と会話をすることも可能になりました。しかしながら、お年寄りがタブレットを自在に利用したり、声が出せない人がファーストフード店で注文したり、耳の聞こえない人が大学で講義を受けたりするためには困難を伴うことが多くあります。

 そこで、一人ひとり異なる障害について理解しながら、適切な道具や環境を選択できる社会環境があれば、暮らしのおける困難を除去し、あるいは低減させることができるかもしれません。情報バリアフリー・ラボは、そのような社会の実現を目指しながら、障害の有無に関わらない豊かな暮らしの実現に寄与してゆきたいと考えています。