KOKUA Programとは、ハワイ大学マノア校における障害学生支援を担当する独立した機関である。ちなみにハワイ大学マノア校は州立ハワイ大学機構における最も大きな総合大学のひとつで、学士・修士課程それぞれ87専攻、博士課程51専攻を有し、学生総数20,000名以上、教員数約2,000名という大きな大学である。
KOKUA ProgramのMs.Ann Ito所長には以前より懇談を申し込んであったのだが、秋セメスターの初期はオリエンテーションなどがあるため、かなりお忙しい様子であり、この時期となった。しかし、実現できたことは幸運であると思う。Ito所長ご自身が全盲の障害当事者であり、Officeには点字ピンディスプレイの接続されたPCが置かれ、スクリーンリーダー用と思われるヘッドホンも有った。
ちなみに、kokuaとはハワイ語でhelpを意味する言葉であり、さらにハワイ語の"Kahi O Ka Ulu Ana"(英語で"The place of growing.")の頭文字をとったものである。
私自身、支援技術が専門であるということから、KOKUA Programにおける情報環境の整備や指導を手がけるAccess Technology SpecialistのDr.Teresa Havenも同席して懇談が行われた。視覚障害などの情報障害をもつ場合、スクリーンリーダーなどのAccess Technologyを使いこなすだけのSkillがあるかが重要となり、これらのSkillをつけるための指導支援がとても大切であるということから、それらも学生ボランティアを養成しながら実施しているようであった。
懇談では、まずマノア校における障害学生支援の概要から始まり、さまざまなニーズをもつ学生の「何」を大学で支援するのかという基本的な姿勢や、実際に展開している多彩な支援内容について話を伺った。具体的な支援メニューには目新しいものはなく、オーソドックスな内容ではあるが、障害学生本人のみならず、両親や高校、病院など周囲への情報提供や教育指導などもあり、守備範囲はかなり広範囲に渡っている。さらに、大学教員への支援もかなり努力をされている様子であった。しかし、Programに協力的な大学教員は少ないとの嘆きには同じ教員として耳が痛かった。
KOKUA ProgramのOfficeはキャンパスのほぼ中央にある学生サービス関係機関が集まっている建物にあり、受付から奥に伸びる通路にはガラス張りになった個室があり、そこにはJAWSなどのスクリーンリーダーやCCTV(拡大読書器)などが設置されており、落ち着いて勉強のできる環境が整っている。また、さらに奥には職員の個室と障害学生が自由に使えるパーティションで仕切られた学習スペースなどがあり、車いす利用者であっても、便利に使える机などが設置されていた。
また、私自身の仕事についても概要を紹介した。その中でも、私自身が技術系(エンジニア)であるにも関わらずリハセンターに長く勤め、そして現在、社会福祉学部の教員をしていることや、JOIN Project(音声認識による障害学生のための授業支援)について、強い感心を持たれた様子であり、いくつかの質問があった。
JOIN Projectについては、日本語の複雑さもご理解されているようであり、漢字かな混じり文の誤変換の多い元データを、授業後に学生らが修正/編集し、e-Learningとして学習支援に活用している事業を実際に運用している事実には深く感心をされた。英語音声認識の精度はもっと高いのではあるが、このようなシステムを実際に導入し、運用するのはとても無理だという感想を口にされた。
私の残り僅かな滞在期間中に再度訪問させて頂く機会をお願いし、帰路についた。
久しぶりに充実した時間であったと思う。
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