日: 2008年1月31日

年金問題と新自由主義

社会保険庁のホームページに「年金記録に対する信頼の回復と新たな年金記録管理体制の確立について」というページがあり、そこには「...皆様の大切な年金の記録を一件一件丁寧に確認させていただく...」と表明してある。

しかし、昨日のNewsに「厚生年金:転記作業で派遣の中国人ら大量ミス」というのがあった。

マスコミはわざわざ中国人らという見出しをつけているが、しかし、中国人だろうと日本人だろうと大切な年金の記録を一件一件丁寧に確認させていただくと言っている以上、派遣やバイトを使うということには結びつかないように思う。

小さな政府を目指し、国から地方に権限を委譲し、国家公務員を削減し、ほとんどの業務を委託(福祉・公共サービスを縮小)にして、大幅な規制緩和と市場原理主義の重視という新自由主義は本当に国民のためになるのだろうか。

市場原理を福祉や公共サービスに導入するからこそ、福祉医療現場の低賃金化を助長し、コムスン(グッドウィル)による不正問題が発生し、医療の地域格差や医療職の過労を増大させているのではないか。今回の問題も、社会保険庁が「大切な年金」の台帳の転記をフルキャスト=派遣会社に丸投げしたことに端を発しているのではないか。

古い年金記録台帳は手書きということで転記が必要となったようだが、手書きというのは日本人であっても普段から手書き文字を見慣れていないと判読できるものではない。特にバイトという比較的年齢の若い層には、ディスプレイの文字は見慣れていても、昔の達筆な人の書いた手書き文字の判読などとても無理な話である。

古い戸籍謄本や登記簿などを見ると解るのだが、私にも読めない旧漢字を使っていたりすることも多く、すらすらと読めるものではない。それを1枚いくらというような歩合制のバイトにさせることが果たして問題にならないのであろうか。

超高齢化社会の日本では介護職員が少ないから、東南アジアからも介護福祉士になる道を作り、安い人件費の介護職員を多くする、というようなことも市場原理=新自由主義である。しかし、介護職を目指そうとしている高校生や大学生は少なくない。だが、大卒介護職の初任給は高卒の平均初任給とほぼ同じかそれよりも下がることもあるらしい。それも原因となりNHK特集のようなワーキングプアになっていく。そしてやりがいがあるからこそ、バーンアウト(燃え尽き症候群)となり離職していくことも多いと聞く。

介護など福祉の仕事に就きたいけれど給料が安いから生活できないために一般企業へ就職する、という現状を厚生労働大臣や外務大臣は知っているのだろうか。東南アジアからの労働者は社会保険庁とフルキャストがしでかした転記ミス続出の仕事と同じ結果となるのではないだろうか。本当に必要なのは対症療法的な「人が増えれば良い」という人数合わせではなく、その仕事に「適する優秀な人材」を確保するためにはどうしたら良いのかを(基本給を上げれば良い!)国が検討することが必要なのだ。

政府には国際貢献などよりも国内(国民)貢献をしてもらいたい。

そのうちに年金も海外の証券会社に売られてしまうのではないか。そうなると国家であることを捨てることになるのではないだろうか。。。